これは僕自身が数えた記録で、投資助言ではありません。
「株が下がったら買おう」と思って現金を貯めている人がいます。
下がったところを狙って買うことを、押し目買いと言います。
この待ち方には、有名な検証があります。
神様でも、毎月買う人に勝てなかった
アメリカのNick Maggiulli氏の検証(Even God Couldn’t Beat Dollar-Cost Averaging)です。
S&P500を使って、2人を競わせました。
- 毎月100ドルを、機械的に買い続ける人(いわゆるドルコスト平均法)
- 毎月100ドルを貯めておいて、底値のときだけ買う人
しかも後者には、いつが底値かを事前に知っている神の目を持たせています。
完璧なタイミングで買えるわけです。
結果は、試した期間の7割以上で、神様の側が負けました。
底値は滅多に来ないので、待っているあいだの上昇を取り逃がすからです。
ここで疑問が湧きました。
神様でこれなら、底値が分からない普通の人はどうなるのか。
普通の人は「10%下がったら買おう」のように、自分で線を決めたりして待ちます。
その線ごとの結果は、上記の検証には出てきません。
なので、自分で数えました。
やったこと
S&P500の30年(1996〜2026年・配当込み)で、3つの買い方を競わせます。
毎月3万円ずつ入金があり、10年で合計360万円を投資するのは3つとも同じ条件です。
- つみたて:毎月3万円を投資して、つみたてていく
- 押し目待ち:毎月3万円を貯金していき、下がった月に貯まってる全額を入れる
- 一括:最初の月に360万円を一気にまとめて入れる
ちなみに、押し目待ちの下がったと判断する線は、直近1年の高値から3%〜30%まで9パターン用意しました。
使わなかったお金は現金のままです。
始める月によって結果が変わるので、開始月は1か月ずつずらして247パターンで数えています。
この記事に出てくる成績の数字は、247パターンを並べたときの真ん中の値です(中央値)。

結果:10年後にこうなった
| 買い方 | 増えた割合 | 10年後の金額 |
|---|---|---|
| 1位 一括 | +118% | 約786万円 |
| 2位 つみたて | +74% | 約627万円 |
| 3位 押し目待ち(10%) | +53% | 約549万円 |
押し目待ちは最下位で、つみたてに80万円近く差をつけられました。
しかも247パターンのうち、つみたてに勝てたのはゼロ。
3%や5%の浅い線でもゼロでした。
つまり、神様のいない現実の押し目買いは、どの線を選んでも、どのタイミングで始めても、つみたてに勝てていません。
負けた理由は、保有していた長さ
押し目待ちは安く買えています。
入れた総額も同じです。
では何が違ったのか。
株を保有していた長さを数えると、はっきりしました。
| 買い方 | 保有していた長さ |
|---|---|
| つみたて | 60か月 |
| 押し目待ち(10%) | 44か月 |
| 押し目待ち(25%) | 29か月 |
安く買えたメリットより、保有していない期間の損失のほうが大きかったということです。
※ちなみに貯金している間の利息はなしで計算しています。
そもそも押し目が来ない
10%下がる場面は、30年で66か月ありました。
ただし来る年が固まっています。
- 2001〜2002年(ITバブルの崩壊):23か月
- 2008年(リーマンショック):11か月
- 2022年(物価高と利上げ):8か月
- 1度も来なかった年:17年
暴落の数年にまとめて来て、残りの17年はまったく来ません。
2012〜2017年のような平和な時期は、ずっと待ちぼうけです。
30%の線ならもっと極端で、30年のうちリーマンショックの8か月だけ。
その30%の線で待った人の半分ちかくは、10年やって1回も買えませんでした。

深く待って勝った人もいる
25%の線で待った人は、中央値では負けたものの、247パターンのうち95パターンでつみたてに勝ちました。
何年も貯めたお金を、リーマンショックの入り口でまとめてぶち込んだ人たちです。
ただし、その大きな下げが10年の中に来なければ、ずっと現金のままです。
つまり深い線で勝てるかは、暴落に出会えるかの運しだいです。
ちなみに、さらに深い30%の線は勝ったのは61パターンまで減っていました。
数えて分かったこと
安く買うことと、長く保有することは、別の話でした。
この30年では、長く保有するほうが強く効いていました。
今すぐ買ったほうがいい、という話ではありません。
数えたのは過去30年のことで、これからも同じになるかは分かりません。
僕自身も、この結果を見て何かを変えたわけではありません。
同じデータでも数え方で結論が変わる話は、AIに作らせた3倍株の条件は、まぐれ判定を通りました。当たった2年を外すまではにも書きました。
平均という数字が実態とずれる話は、平均で年5%増えるゲームを1万人にやらせたら、真ん中の人は元本割れでしたにあります。
この記事を書いている僕が、実際にAIに任せて運用している結果は「運用日記(本物のお金の記録)」でそのまま公開しています。口を出した日も、負けた月も、全部そのままです。
※数字は、イェール大学のロバート・シラー教授が公開しているS&P500の長期データ(2026年8月26日取得)から僕が集計したものです。
月ごとの値段で数えているため、月の途中の下げは拾えていません。手数料・税金・待っている現金の利息も入れていません。
1996年1月から2026年8月までの過去の集計であり、将来の成績を保証するものではありません。
最終的な判断はご自身の責任でお願いします。


