AIはもう、たいていのものを真似できます。文章も、絵も、コードも。だったら一番むずかしいものを写させたらどうなるんだろう、と思ったんです。少なからず持ってる人もいるのではないかと思う、売買の裁量的な要素そのものを。
先に結論から書きます。半分は、きれいに写せました。もう半分は、何度やっても写せませんでした。そして写せなかった半分こそが、たぶん僕がやる意味のある場所でした。
前回、日本株に米国株を混ぜても効かなかった検証の話を書きました。今回はその続きで、AIに検証させる相手を、自分の手そのものにしてみた回です。
10年分の売買記録を、1件ずつ解剖させた
やったことは単純です。自分の過去のトレードを1件ずつカルテにして、その時のチャートや相場の状況をAIに見せながら、なぜここで買ったのか、なぜここで売ったのかを片っ端から質問させました。2026年の7月、丸2日かけて。
面白かったのは、勝ってる回数が実は半分もないと数字で突きつけられたことです。それでも10年ちゃんとプラスで来られている。僕は損切りをかなりはやくするタイプで、負けを小さく、勝ちを大きく、を無意識にやっていたらしいんですね。自分では意識してなかった癖が、記録には残っていました。
機械が写せた部分
入口の作業は、AIがあっさり再現しました。自分の何層かのフィルターで候補を作る部分と、その候補にいつ入るかの判断をする部分。ここはルールにできたんです。実際、この2つはもう自分の自動化ツールに組み込んで、機械に任せています。
ここまでなら、めでたしめでたしの話です。自分の手が機械に移せた、と。でも本番はここからでした。
7回試して、7回とも写せなかった部分
写せなかったのは2つです。候補がたくさん並んだあと、その中から本丸を実際に絞り込む。そして、買ったあとにいつ降りるか。
特に出口です。僕の降り方を数式にしようと、AIは何度も挑戦しました。過去のデータで検証しては、僕の実際の成績に勝てず、作り直す。それを7回くり返して、7回とも届きませんでした。同じ売りのサインでも、ある場面では正解で、別の場面では大間違いになる。機械はそこを一本の線で引こうとして、毎回どこかで破れるんです。
なぜ写せないのか、自分でも分かっていなかった
解剖の途中で、僕はこんなことを口走っていました。自分用のメモに近い、整理されてない言葉です。
私の言語化能力が低いんだと思ってます。結局は大局を見て徐々に的を絞っていって……ここの間に細かいチェックが言語化できてないんだと思います。ただ今はそれがどこなのか見えてない
これが答えでした。写せない理由は、僕自身がその判断を言葉にできていないからです。全体を見て、だんだん絞って、最後の細かいところで決める。この流れは言えます。でも絞る途中で何を見ているのかが、自分でも見えていない。見えていないものは、教えようがない。だから機械も写しようがなかったんです。

一つ補助線を引くと、料理に似てるかもしれません。レシピは渡せます。材料も、火加減の目安も書けます。でも、最後にちょっと味を見て塩を足すかどうかの絶妙な判断だけは、レシピに書ききれない。長年やってる人の手が、勝手に動く部分です。僕のトレードの絞り込みと降り際は、この塩ひとつまみでした。
写せた所は渡して、写せない所だけ自分に残す
この解剖には、正直かなり期待していました。全部ルールにできたら、僕はもう相場を見なくていい。でも結果は逆で、一番おいしい部分は最後まで手元に残りました。
ただ、これはがっかりする話ではなかったです。全部が機械に写せるなら、それは誰でもコピーできるということでもあります。写せない部分が残ったというのは、自分がやる意味がまだそこにある、ということでした。
今は、写せた入口の作業は機械に渡して、写せなかった絞り込みと降り際だけを自分で見ています。役割分担がはっきりしました。機械にできることは機械に、人にしかできないことは人に。当たり前のことを、自分のお金と10年の記録で確かめられた2日間でした。
あなたが長くやっている仕事にも、レシピに書けない塩ひとつまみ、ありませんか。そこがきっと、まだ自分がやる意味の残っている場所です。
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このページは僕自身の記録と考えの共有であり、投資助言ではありません。特定の売買手法の推奨や勧誘を目的としたものではなく、投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。


