平均で年5%増えるゲームがあります。続けていれば、増えていくはずですよね。
先に結論だけ。同じゲームを1万人に30年やらせてみたら、真ん中の人は元本割れでした。ここで言う真ん中の人とは、1万人を成績のいい順に並べて、ちょうど真ん中の5,000番目に立っている人のことです。その人の残ったお金は、100万円が74万円になっていました。
一方で、1万人の平均はちゃんと増えていました。442万円です。数字が間違っていたわけではありません。それでも真ん中の人は減っていました。ここが今日の話です。
ルールはこれだけです
難しい設定はありません。
元本は100万円。1年に1回コインを投げます。表が出たら資産が40%増えて、裏が出たら30%減る。表と裏は半々です。
1年あたりのもうけを紙の上で計算すると、プラス40%とマイナス30%のちょうど中間なので、年5%です。つまりこれは、平均すれば年5%増える、なかなか良さそうなゲームということになります。
先に言っておくと、1年で40%増えたり30%減ったりというのは、現実の投資よりだいぶ荒い設定です。仕組みが目に見えるように、わざと大きく振らせています。
これをAIに1万人ぶん、30年ずつやらせました。
平均は、ちゃんと合っていました
まず答え合わせから。紙の上の計算だと、30年後は432万円になるはずです。実際に1万人でやってみた平均は442万円でした。ほぼ一致です。計算そのものは、正しく動いていました。
問題はここからです。
勝ちと負けが同じ回数でも、お金は減ります
黄色い線が、30年のうち勝ちと負けがちょうど半々だった人です。青い線が、紙の上の計算。同じゲームなのに、最初から反対を向いて離れていきます。
そして30年後、この半々だった人に残ったお金が、ちょうど1万人の真ん中でした。74万円です。平均の442万円とは6倍近い開きがあります。
もう少し見ていきます。

1万人のうち、30年やって元本を割ったのは5,733人。半分以上が減って終わっています。逆に、平均の442万円以上を手にできたのは1,791人だけでした。10人に2人もいません。
平均が442万円というのは嘘ではありません。ただ、その平均を体験できる人は、ほとんどいなかったということです。
なぜこうなるのか。体重で考えると早いです
種明かしは、小学校の算数でできます。
体重で考えると、たぶんいちばん早いです。
60キロの人が10%太ると66キロ。そこから10%痩せると59.4キロです。同じ10%なのに、元には戻りません。理由は土台の大きさで、増えるときの10%は60キロにかかりますが、減るときの10%は増えたあとの66キロにかかります。減るほうが、いつも一歩大きいんです。
お金でも同じことが起きます。だから上下に大きく振れるゲームでは、平均は上に引っ張られるのに、真ん中の人はじりじり削られていきました。1万人でやったら、その差が6倍になって出てきました。
前に書いた複利の記事に、ひとつ足しておきます
以前、複利の記事で、毎月3万円を30年積み立てて年5%なら2,507万円になる、と書きました(毎月3万円で、30年後に1,400万円の差。複利の力を数字で見てみた)。あの計算は間違っていません。
ただ、あの2,507万円は、毎年きっちり5%増えたらという前提の数字です。今日のゲームのように上下に大きく振れると、同じ平均5%でも着地はまるで変わります。平均という数字がそのまま自分の未来になるのは、ブレがない世界だけでした。
じゃあどうするか。振れ幅を減らしてみました
言葉で説明するより、同じゲームでもう一度回したほうが早いので、やってみました。
平均は年5%のまま動かさず、振れ幅だけを減らします。
表が出たら20%増えて、裏が出たら10%減る。真ん中は変わらず年5%です。

真ん中の人の残ったお金が、74万円から317万円になりました。元本割れした人も、5,733人から512人まで減っています。ゲームのもうけ(紙の上の年5%)は1円も動かしていません。振れ幅を小さくしただけです。
これが分散の正体だと思っています。分散をしても、もうけの平均は増えません。減るのは、大きく外す確率のほうです。真ん中の人が助かるのは、平均が上がったからではなく、削られ方がゆるくなったからでした。
振れ幅を小さくする方法は、大きく2つあります。買う時期を分けることと、買う場所を分けること。
時期を分けるのが積立
場所を分けるのが分散です。
実際、暴落の直前に積立を始めた人がどうなったかを実データで見たときも、効いていたのは当てる力ではなく、分けて続ける形のほうでした(暴落の直前に投資を始めたら、どうなったか。リーマン直前の10年を実データで見てみた)。
ただし分散のほうは、数を増やせばいいという単純な話ではありませんでした。自分の運用で17通り試して全部失敗した記録が別にあります(勝てる部品を集めたら、チームは弱くなった。AI検証211本目で見えた分散投資の正体)。
平均は、自分の未来ではありません
今回いちばん残ったのは、これです。
平均年5%と言われたら、僕らは自分がその5%をもらう側だと思って計算します。でも1万人でやってみたら、その平均に届いた人は2割もいませんでした。届かなかった8割の人も、何か間違えたわけではありません。同じゲームを、同じルールで、ただ引きが違っただけです。
だから僕は、良さそうな平均の数字を見たときに、いったん止まるようにしました。その数字の後ろに、どれくらいの振れ幅がぶら下がっているのか。それを聞かないと、平均は自分の話になりません。
あなたが最近見た平均◯%は、誰の未来の話でしょうか。
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※本記事は架空のゲームを使った試算と考え方の紹介であり、投資助言ではありません。試算の条件は本文に記載したとおりで、同じ条件なら再現できることを確認しています。特定の金融商品の推奨や将来の成果を保証するものではなく、投資の判断はご自身の責任でお願いします。


